○目的 一般的な光計測は,サンプルに光を照射して反射や透過,散乱を検出する「アクティブ」な計測です.しかしながら,アクティブな計測は光に対する「応答」を検出しているに過ぎません.より興味深いのは,サンプル自身が自ら発する光です.実際にミクロで見ればサンプル自身も光を発しており,その波長はテラヘルツ領域(THz, 波長 10 μm-1 mm)にあたります.要因は分子運動,格子振動など様々です.この光を,照射光を使わずに「パッシブ」に検出します.つまり,サンプル自身が発する光を「ナノ」で捉えることを目的としています. ちなみに,サーモグラフィや天体望遠鏡などはパッシブ計測の一例ですが,感度と空間分解能が低いため,温度や光学定数がマクロに平均化された空間分布情報しか得られません.本研究の目的が達成されれば,例えば生細胞内のローカルな活動(ATP加水分解,タンパクの運動など)や,化学反応時の触媒近傍の局所温度分布などがリアルタイムで可視化できるかもしれません. ○方法 目的達成のためには,1)圧倒的感度を持つTHz検出器,2)ナノスケールの分解能,が必須となります.1)については,東大・小宮山研で開発された世界最高感度のTHz検出器CSIP(Charge Sensitive Infrared Phototransistor)を導入し,2)については散乱型近接場顕微鏡を開発することで課題を解決しています. ○現況 パッシブ型THz近接場顕微鏡を開発し,物質表面からのTHzエバネッセント波を,分解能60nmで検出することに成功しています.パッシブかつナノスケールなTHz計測は前例が無く,世界でも本装置のみが可能です.応用例の1つとして,物質表面の温度分布をナノスケールかつ非侵襲で観察することができます(ナノサーモメトリー).光学的にナノスケールで温度分布が可視化できる顕微鏡も,本装置以外に存在しません. 現在ようやく装置のひな形が出来たところです.これからは装置の改善をしつつ,アプリケーション開拓を進めます.全く新しい顕微鏡なので,応用展開の可能性は大きく拡がっています. ○参考文献 [検出器] S. Komiyama, IEEE J. Selected Topics Quant. Electr., 17, 54 (2011). [顕微鏡] Y. Kajihara et al., Opt. Exp., 19, 7695 (2011). Y. Kajihara et al., Rev. Sci. Inst., 81, 033706 (2010). |
![]() アクティブ計測とパッシブ計測 |
![]() パッシブなTHz近接場検出方法 |
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![]() パッシブなTHz近接場像(分解能 60 nm) |
樹脂と親和性の高い赤外・テラヘルツ計測を駆使し,樹脂成形品の新しい評価法を開発中です.最終的にはインプロセス評価法の確立を目的としています. |
○目的 構造材の軽量化や複合材料の導入が進むなか,それらの異材接合技術の開発は超軽量化へ向けた最重要課題です.金属表面に微細構造を創製し,インサート射出成形を行うことによって強固な金属-樹脂接合を得る方法が注目されていますが,1) 最適化条件が分かっていない,2) 接合メカニズムが分かっていない,などの技術的課題があり,信頼性・耐久性の評価は簡単ではありません. 本研究では,金属表面の微細微細構造を利用した金属-樹脂インサート成形において,成形条件(温度,ゲート位置,接合面積,圧力など)をコントロール可能な独自のインサート成形金型を設計・作製し,かつ様々な独自の計測技術を駆使することにより接合技術を最適化し,接合メカニズムを解明することを通じて当技術の生産性・信頼性を高めることを目的としています.最終的には,自動車産業(車体接合など)や電機産業(Liイオン電池実装など)への導入が期待できます. ○方法 ベース技術は,化学反応やレーザ加工によって金属表面に微細構造を創製し,その金属片にインサート射出成形を行うことによって強固な金属-樹脂結合を得る方法です.微細構造に樹脂が入り込んで大きなアンカー効果が生まれ,強固な接合ができると言われていますが,実際の接合メカニズムははっきりと分かっていません. 本研究では,標準重ね継手を独自金型によってインサート成形します.接合面近傍の圧力・温度がインプロセスでモニタできる,真空引き(樹脂がナノ構造に浸透しやすくなる)ができる,ゲート位置や温度,接合面積などが容易に変更できる,などといった要件を満たす金型を設計・作成し,継手を様々な条件で作成・評価することによって最適化,接合メカニズム解明を推し進めます. ○現況 まだ立ち上げたばかりで,現在金型の設計を完了し,完成待ちです.本メカニズムを解明することは,一般的に接合要因がはっきりと分かっていない接合技術分野において非常に大きな知見となるはずで,他の接合技術などへも波及することによって接合研究がさらに活性化し,国際競争力が大きく向上することが期待できます. |
![]() 表面微細構造を利用した金属―樹脂接合 |
![]() 樹脂-金属重ね継手 |
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![]() インサート成形用金型のキャビティ周辺 |
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